木箱を開けると、ひのきの香りが清らかな世界へと導いてくれます。
この散華、持ち主の尼僧さまから3年前にお預かりしている一品。
「 落慶記念 華蓮弁 」と木箱の蓋に書かれています。
尼僧さまは、比叡山で得度されました。
ある朝、お不動様の霊告があり下山されました。
そのお告げとは・・・
早朝、眠っていた尼僧さまに「 ○○山に行くように 」という内容でした。
気のせいかと思い再び眠ると、また同じお告げがあったそうです。
早速、下山し○○山に参拝され そのお寺で勤める事になったのです。
でも人員は足りていた為、最初は断られたそうです。
「 それでは、無償で。 」
という事で数年間、下座行をなさいました。
一言で「 下座行(げざぎょう) 」といいますが、並大抵な覚悟で勤められない仕事でした。
数年間、勤めあげ 佛縁にて次に行くお寺が決まりました。
無償で勤めていましたが、そのお心を院主様は感じておられていたのでしょう。
退職金といいますか、院主さまより頂いたそうです。
次に行ったお寺では、多宝塔の再建のお話が進んでいました。
尼僧さまは、退職時に頂いたお金をそのまま、多宝塔の建立のために寄進されました。
平成の世に、450年ぶりに多宝塔が建立されました。
その落慶の記念品として届いたのが、この「 華蓮弁 」なのです。
多宝塔建築宝剤 原始林、吉野桧で一つ一つ手作りされた一品。
その大切なお品を、どうして私がお預かりしているのか。
3年前私は、試そうとしていた治療法前の検査で大きく体調を崩してしまいました。
身も心も衰えてしまった私を励まそうと訪ねてきた時に、
このお品を置いていかれたのです。
神佛に通じる心は、光の速さより はやく届くと聞いた事があります。
そろそろ、尼僧さまにお手紙を書いてみようかな。
このお彼岸に、色んな事を思い出しました。